若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
見合い相手は、興味深い女
「お帰りなさいませ。お見合いは如何でしたか?」


テナントビルの屋上からオフィスへ戻ると秘書の松崎が迎え入れ、「どうせまた、いつもの様に相手を無視してきたんでしょ」という雰囲気で、冷めた微笑みを浮かべている。


「ああ、意外にも楽しかった」

「ええっ?」

「いや、楽しいとはちょっと違うな。意外だった…と言うべきか、かなり変わった女だった」

「えっ?それは…」


どういう意味です?…と言いたそうな顔つきで俺を見つめ、窺うような目線を送ってくる。
その顔に微笑んで返し、事の発端を教えた。


「初めて女性に放置されたよ。いつもなら煩いくらいに言い寄ってくるのに、知らん顔されたのは初めてだったな」

「は?」


意味が分かりませんけど…と言いたい言葉を呑み、じっと俺を眺め続けている。
松崎の視線を受け止めながら、俺は曖昧な表情を浮かべ、どさっとチェアーに身を沈めた。


「お相手の方は美人でしたか?確か、テナントビルに出店されている呉服店のお嬢様でしたね」


先日の異業種交流会に俺と一緒に参加していた松崎は、両親と相手の祖父との会話を耳にしていたらしい。


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