若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
異業種交流会で会った、老舗呉服店『染屋白浜』の四代目当主によれば、「孫は変わり者なのです」と称されていた。


彼女は高校時代から、「和モダンのデザインを学びたい」と言っていたらしく、両親が止めるのも聞かずに女子大の服飾学科に進み、そこでデザインについて学んだ後は花嫁修行もせず、日々デザイン画を描いている…と説明を受けた。


彼女の祖父、大泉弦二郎(おおいずみげんじろう)氏は、そんな変わり者の孫が大事らしく、「そういう子ですけど、可愛くて憎めないのです」と付け加えて言った。


「私の贔屓目でしょうけど、顔は整っている方だと思うのです。望めば幾らでも嫁の貰い手がありそうですのに嫁にも行かず、自分はデザインを続けたい…と申しまして」


年は既に二十七歳にもなっているのに…と嘆く彼を、俺は苦笑しながら聞いていたのだが、両親が、「それなら自分の息子と変わらない」と言いだし、「何ならお見合いをさせてみませんか?」と勧め始めたからギョッとした。


「こいつもお見合い話を断ってばかりいて困っていたのです。政略結婚なんて馬鹿馬鹿しい、と申しまして、その気にも全くなりませんで……」


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