若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
これまで散々我が儘を聞いてきてやったのだからな、と頑なな態度を見せる祖父は、来週の土曜日に相手と屋上庭園で見合いする手筈が整っている、と言い始める。


「ええーっ!」

「問答は無用だ」


分かったらさっさとエステにでも行きなさい、と指を刺される私、老舗呉服店『染屋白浜(そめやしらはま)』の一人娘で大泉香織(おおいずみかおり)、二十七歳。
来月二十八歳の誕生日を迎えるにあたり、年明けからこっち、似たような縁談話を次々と持ち掛けられてきた。


「お祖父さん、私、結婚はまだしたくない、といつもあれほど…」

「馬鹿者!これまでの様な相手とは比べ物にならんくらいの上等な代物だぞ!本来ならこっちに話など回ってこないくらいの相手なのだが、今回はたまたまご縁があって、是非とも頼む…と願われたのだ」

「ええっ!?」

「案ずるな。相手もお前と似たり寄ったりの変わり者らしいから。それに、実際に顔を見てきたが、かなりのハンサムボーイだったぞ。背も高いし、頭もキレそうで礼儀も正しかった」

「別にそれなら私でなくても」

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