若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
「あの…この天井、すごいです。まるで帯の柄のようにくるくる文様が変わっていって、万華鏡みたいというか、ずっと観てても飽きない感じがありました」


照明もきっと上手い具合に調整されているから、眩しさも感じずに眺め続けられたのだと思う。


「素敵でした。本当に。ずっと眺めていたいくらい、綺麗だった」


これもこの人が設計したんだろうか?…と思いながら興奮気味に訴えると、相手はクールに微笑み返し、「それじゃ次に行こうか」と言ってくる。


「えっ、まだあるの!?」

「此処は、古き良き日本の文化を全世界に発信する施設だと言っただろ。だから、今見たような和の世界を、施設の随所に盛り込んであるんだ」


得意そうな顔を見せ、「行くぞ」と言いながら手を取って歩きだす。

おかげで私は彼の強引さに巻き込まれ、その後一時間近く、テナントビルのあちこちを連れ回される羽目になってしまった。



彼に解放されたのは、一通り施設内を歩き回った後だ。

「お茶でも飲むか」と提案してくる人の元に電話が入り、厳しい表情で対応した彼が、通話を切ると苦々しい顔つきで断りを言ってきた。


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