若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
ちらりと視線を流す先には、同じビレッジ内にある高層オフィスビルが建っている。

テナントビルからあそこへは、歩いても五分程度しかかからず、それじゃ…と少し安堵したところだったが。


「45階にオフィスがありまして、そこへ行くには、三基のエレベーターを乗り継いで行く以外は、地下の駐車場から直通のエレベーターで上がるしか方法がありません。
三基のエレベーターを乗り継いでまいりますと、時間が優に二十分以上かかりまして、それではお約束には間に合いませんので、どうぞ車の方へお乗り下さい」


ささっと大きくドアを開き、私が乗り易くしてくれるのだけれど__。


(これって、思いきり緊張するんだけど)


それも、こんな高級車乗ったこともないよ、と泣き言を思いながらお尻を滑らせ、ゆっくりとシートに背中を凭れて息を吐く。


体がシートに張り付くと、直ぐに松崎さんはドアを閉め、運転席へと回り、シートベルトを締めながら、「それでは参ります」と言ってくる。



「はい…お願いします」


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