若きビル王とのエキサイティング・マリッジ

こんな返事で良かったのだろうか…と心配になりながら、ロータリーを回った車はオフィスビルへと向かい、あっという間に螺旋状の場内を降りて行き、地下５階の専用駐車場へと辿り着いてしまった。


その間、たったの四、五分。
これなら確かに、歩いて行くよりも早い。



「どうぞ。お降り下さい」


いつの間に車から降りたのか、松崎さんがドアを開け、さっと掌を差し出しながらエスコートしようと待ち構えている。


「ど…どうも」


沈み込んだ体を起こし、ゆっくりと車外へ踏み出せば、彼は私の掌を支え、さっと立ち上がらせてくれる。

そのタイミングの良さに驚いて足を進ませ、エレベーターに乗り込むと、一気に４５階へ向けて引き上げられてしまった。


後から聞いた話なのだが、このビルの４５階から上のオフィスは、ビレッジの所有者でもある旧財閥家関連の企業しか入っておらず、セキュリティーの観点から、役員は皆、直通のエレベーターを使用することになっているのだそうだ。