若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
そう言うと先に自分が進んで行き、「大泉様をお連れしました」と断る。


「そうか。入って貰ってくれ」


不機嫌そうな声に思わず足を竦ませる私。

松崎さんは気の毒そうに私を視界に入れると「お気になさらず」と小声で囁き、前を避けて、「どうぞ」と手先で進むよう促した。



「お邪魔……致します」


オドオドと、まるで勝手の違う場所へ来たような感覚で足を踏み入れると、部屋の中央にいる男性はスーツの上着を脱ぎ、ワイシャツにベスト姿でデスクの端に腰掛け、足を組んだまま腕組みをして、こちらを見つめていた。



「あの……今晩は」


人を呼び付けておいて、その態度?…と顔を引き攣らせながら思い、不機嫌そうに見える表情を見つめ返して、取り繕うように笑う。


「ああ」


それだけかい!と思わず言いたくなる私を前にした彼は、デスクから体を離すと近寄って来て、愛想笑いを浮かべ、「ようこそ」と声をかけてくる。


「突然呼び出してすまなかった。どうしても君に見せたいものがあったのを、此処へ戻ってから思い出したんだ」


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