若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
うっとりした声で説明してくる彼だけれど、こういう光景を見ていれば、誰でもそんな気分に浸ってしまうのでないか。


「だけど残念なことに、この景色は誰もが観られるものじゃないんだ。観れて精々このビルの西側で働く人間か、またはホテルの宿泊客、それか、あの病院に入院している患者……くらいかな」


目線は別の方向へ向けながら説明を繰り返す。
その相手の顔を窓越しに見つめ、ライトアップが元に戻った日本庭園へと眼差しを移してお礼を言った。


「ありがとうございます。とても貴重なものを見せて頂いて、すごく感動しました。…私、全く知らなかった。あの庭が、夜は近代的な明かりで照らされているなんて」


昼間働いている時には絶対に見ることができない景色。それを特別に見せて貰えて、とてもラッキーだったと感じていた。


「さっき言っていた『刺激』って、このライトショーのこと?確かにとても刺激的で、繊細だったけど」


振り返って笑うと相手は真顔でこっちを見ている。
だから、私は自分が何か変なことを言ってしまったのかと思い、カッと頬を熱くして俯いた。


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