若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
「……参考になったか?」

「え?」

「君の着物デザインの参考になったか、と訊いている」

「は?…え、ええ。勿論!」


驚きながら顔を向けると、相手の唇は緩やかにカーブし、目元は下がって優しい顔つきに変わる。だから、思わず胸が鳴ってしまい、それを鎮めるように口早に喋った。


「今のライトショーもそうだったけど、昼間見せてもらったビルのデザインも、とてもいい参考になりました。
あんな硬い金属で出来ているビルなのに、和の雰囲気や文様がいろいろと演出されていて、しかもそれがすごくさり気なく自然な感じで、なんだか近代的な建物の中にいるとは思えないくらい、マッチしてて不思議だった」


あんな風に、自分もモダンな柄と和の伝統文様を掛け合わせてみたい。
その為に普段からいろんなものを写生しているけれど、今日見たものはまた別の意味で、いい刺激になりそうだ…と感じていた。



「あ…もしかして、今日はその為にずっと?」


私の為?…と驚いて目を見張る。
相手はそんな私に笑みを向けると、「それだけじゃない」と断り、目線を外へ向けながら話しだした。


< 41 / 137 >

この作品をシェア

pagetop