若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
「変な店だろ」


自分では「いい店」だと称していたのにその言い草?…と呆れそうになるけれど、聞けばフランス人シェフが和食の美しさと美味しさに感動し、『フレンチ』という名の和食をプレートの上に表現したいと考えて出店したのだとか。


「意外性を追求するのが狙いなんだそうだ」

「へぇ…。そうなの」


それでお箸で食べられるスタイルなの?…と笑うと、向かいに座る彼も和かに笑い返してくる。

だから、気分まで大らかになっていき、ワインも少量頂きながら、思いがけず楽しい時間を過ごしてしまった。



帰りは二人でタクシーに乗り合い、自宅まで送られた。

車内で、「御曹司でもタクシーに乗ることがあるのね」と笑うと、「そりゃ乗るだろ」と笑い返され、「こんなふうにまた時間を作って話してみたいな」と誘われた。


「ええ。私で良ければ」


即答しつつ、自分が酔ってる…と感じた。多分、少ししか飲んでないワインのアルコール度数が、思っていた以上に高かったのだろう。


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