若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
「オアシス？」


何処それ…と言いたくなってくるが、彼が運転して向かう先はビレッジで、通い慣れた道をただ進んでいるだけだ。

けれど、ビレッジの敷地へ入ると車はテナントビルへは向かわずに、一番奥にある建物へと向かっていくから驚いた。



「あの、此処は…」


呆気にとられて見つめている先には、低層のレジデンスのエントランスが見えている。

彼は、此処の駐車場へ勝手に車を乗り入れるとさっと車外へと降り立ち、私を引き連れてロックの掛かった正面玄関の前までやって来た。


（ここって確か、旧財閥家の御曹司や令嬢とかが住んでいる場所よね）


他にも病院の院長とか、オフィスの幹部などが住人だと聞いている。

しかも、最上階に住んでいるのは外国のＶＩＰで、本当のところはどうか知らないけれど、石油王の関係者だって話……。


（そんな所へ何しに来たの？そもそも、ここのロックだって、住人以外には知らない筈では……）


まさかこの人、此処の住人！？…と驚いて顔を見つめれば、彼は涼しい表情でテンキーをタッチし、指紋認証まであっさりクリアしている。


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