若きビル王とのエキサイティング・マリッジ

けれど、自分達が思うほど、精神的にはきっと満たされていない。
物には嫌になるほど満たされているだろうが、頭では常に仕事上の駆け引きをしているだろうし、嫌になっても立場を放棄して逃げ出すことも不可能だ。

だから、俺はそういう連中の精神的な緊張を緩める場所を作ってやりたいと考えた。
たまには緑を見てほっと息を吐き、手足を伸ばして思いきり深呼吸ができる。そういう環境を生み出したいと思ったんだ。

もしも、戸外に出なくてもそういう場所が此処にあれば、いつでも気軽にリフレッシュできるだろ。だから、こうやって建物で囲むことを考え、安全性も兼ね備えた建築物を試みた。

そしたら、出来上がった建物を見て、ここの最上階の住む住人が笑って言ったんだ。
『此処はさしずめ、富豪達のオアシスだね』と……」

「それで、『富豪のオアシス』と言ったの？」

「そう。他者からの受け売りだが、そう言ってもらえたら本望だ」


そう言うと彼は前に目線を向け、眩しそうに光が乱反射する芝生を見つめている。

その横顔はなんだか満足そうな笑みを浮かべ、キラッと輝く眼差しの奥には、苦労して建てた物への愛着まで感じる。