若きビル王とのエキサイティング・マリッジ

「……私、その気持ち、何となくわかるわ……」


もしも、自分がデザインした着物が世の中の人に評価され、それが自分の思いと一致したらきっと、彼と同じように、やり遂げてきて良かった……と思えるだろうから。



「素敵ね、この場所。私も思いきり駆けだしたい気分」


あの芝生の真ん中に寝転んで、雲を眺めたらどうなるだろう。
自分が空に浮かんでいる様な気分になって、どこまでも羽を伸ばして飛び続けたい気持ちになるのではないだろうか。


ふふ…と想像しながら笑うと、隣にいる彼がきゅっと手を握る。
だから、ビクッとして振り向き、彼を視界に収めた。



「好きにしていいよ。此処なら誰にも遠慮することはない」


優しい口調でそう言うものだから胸が締め付けられる。
彼はただ口角を上げ、目尻を下げて微笑んでいるだけなのに……。



「それじゃ…遠慮なく…」


きゅっと胸の狭まりを感じながら、するりと手を離れ、ゆっくりと足を踏み出した。

心臓の音が跳ね出すのを感じながら、それに躍らされるように、刈り揃えられた芝生の上を軽い足取りで歩みだす。