若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
(ふふ。フカフカ…)


丁寧に刈られた芝生には、程良い程度に新芽が伸び、痛みも感じないし、踏み心地もとても良くて気持ちがいい。

だからと言って、さすがにごろんと寝転んだりはしないけれど、ずっと歩いていたいくらいに足が軽く感じる。


これなら富豪でなくても、ずっとこの場所に居たいと思うかもしれない。
何時間でもここの空気に触れて、解放感に浸っていたい…と考えるかもしれない……。


ハァーッと息を吐き出して視線を先へ向けてみれば、芝生の外周には中高木の樹々が配置され、根元にはベンチも置かれて、時間も関係なく滞在できるように工夫されている。


それに張り出した部屋のバルコニーからはグリーンカーテンも垂れ下がっていて、それがより一層、芝生の緑を引き立たせている。



(不思議だわ、此処。建物と植物が共存している)


どちらが主というわけではない。
建物も植物も共に絶妙なバランスを保っていて、どちらの邪魔もしないように造られているのだ。


だから、此処へ来た瞬間、凄い解放感に包まれた。
四方を壁に囲まれているのも感じないくらい、緑一色に見えたのだ。


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