若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
それに多分、この壁の白さも関係しているのではないか。
真っ白ではなく、くすみがかったグレーホワイトのタイルのおかげで、グリーンが際立って見えているせいでは……。


(凄い。此処、本当に高級な造りがしてあるんだ…)


ぺたん…といつの間にか芝生の上に座り込む。
圧倒されたというか、力が抜けてへたり込んでしまった。


気持ちを落ち着かせるように、ふと視線を上から下へ向け直す。
すると、可愛らしい草形の植物が目に入り、じっと瞬きもしないで見入った。



「…あっ!捩花(ねじばな)!」


思い出したように名前を叫んで近付くと、コイルのように捻った茎の際にはピンク色の花が咲いていて、しかも、その色はとても濃く、クルクルと螺旋状に巻き付いている。



(可愛い、これ描きたい!)


蘭のようにも見える花弁を見つめていると、ついウズウズといつもの様な好奇心が湧き出してしまった。

幸いなことに、バッグの中にはスケッチブックと鉛筆が忍ばされているし、時間さえ許せば、直ぐにでもこの場で写生を始めて、デザインだって描こうと思えばきっと直ぐに浮かぶ。


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