若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
(いいかな。…いいよね)


だって、さっき彼は、「此処なら誰にも遠慮はいらない」と言ったもの。
それはきっと、彼もその中に含まれているはず。


それなら…と勝手に決めて、さっさとバッグの中に手を入れ、鉛筆とスケッチブックを取り出して広げた。

じっと見つめながら捩花のスケッチを始めると、頭の中には直ぐにいろんなデザインが浮かんできて、あっという間に自分の世界に浸り込んでしまう。


「これにタイルっぽい菱文様を加えてみたらどうだろ。色はわざとレンガ色っぽくして、ぼかした感じの若草色と空色の地に描き染めてみて……」


手書き友禅風に仕立ててみればきっと映える。
生地のぼかしは、ふんわり浮かんだ雲みたいに染めてもらって、普段使いの着物っぽく、点々と捩花と菱文様を散らして……。


「ああ、そうだ。縦にツルニチニチソウの葉を這わせてみたらどうかな。茎の間には、ぽつんと一輪花を咲かせてアクセントにしてみたら……。うん、きっと絶対に可愛い!縦に線が入れば柄としても締まるし、市松とか鱗の帯にも合うはず!」


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