若きビル王とのエキサイティング・マリッジ

ふ…と笑う彼の吐息が鼻先にかかり、緊張して胸の音が弾ける。
更に力を込めて目を強く瞑れば、彼は私を抱き寄せて＿＿＿



「あっ、居た！悠大さんっ！」


甲高い女性の声が響いたのは、彼の体温が近付き、体が強張って身構えた時だ。
ギクッと心臓が飛び出しそうなほど驚き、慌てて目を開けると彼の手から離れ、後ろを振り返って声の主を確かめた。


見れば、先程来た出入り口の扉から女性が一人駆け出し、こちらへ来ようとしている。
彼もそれを確かめるとその場から立ち上がり、ゆっくりとそちらへ向いて歩き出した。


ぽかんとしている私の前で、女性は彼に走り寄り、「悠大さん」と名前を発しながら、「ご機嫌よう」と挨拶をしている。彼も上半身を屈めながら女性に笑顔を見せ、「おはようございます」と頭を下げている。


その女性を見た瞬間、私は唖然として、日本人形のようにも見える彼女の容姿に目を奪われてしまった。


彼女はとても華奢な体つきをしていた。
身長はあっても多分百六十センチくらいで、黒いロングストレートヘアを背中の真ん中辺りまで伸ばし、顔は垂れ目なメイクが施され、可愛らしい雰囲気に仕上がっていた。