若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
頭を捻りながら訊き返し、ハッと誰かを思い付いたらしい。
振り向いて、「まさか、あの方ですか?」と訊ね、俺はそれを認めるように頷き返して、「そうだ」と一言発した。


「何のご用事で?…いや、そもそも女性と同伴でいらしゃるのに、あまりにも無粋過ぎませんか?」

「そんなの、あいつが構うと思うか?」

「いえ、全く構うとは思いませんけれど」


『あいつ』の正体を知っている松崎は胸を張ってそう答え、「それで一体何があったのです?」と眉間に皺を寄せてくる。
だから、土曜日のことを思い返し、呆れるような口調で教えてやった。


「あいつは彼女と居る所へやって来て、『もう一度俺とやり直したい』と言ったんだ。
こっちには全くその気は無いけれど、『是非話す時間を作って欲しい』と何度もしつこくせがむもんだから煩くて。
あの場で拒絶して、直ぐに帰ってもらっても良かったんだが、それではきっと後々が面倒だろう。
だから適当に、『時間をまた作ってやる』と答えて、その場を丸く収めただけだけのつもりだった」


なのに、彼女は急に態度を変え、表情まで硬くして、さっさと俺の前から離れていった。

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