若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
そういう関係で、あの場を丸く収めないとまずかった。
例えば断って、春妃のご機嫌を損ねでもしたら、彼処にいた彼女に要らないことを言いだすかもしれない…と懸念した。


それで、春妃に関することを何も答えくないと思い、彼女の質問をスルーしてしまった。
広場へ来たことだけで、ビレッジの住人だというのはわかっていたようだし、その個人情報をペラペラ喋るのも俺の立場としてはどうか…と考えたのだ。


けれど、あの場合、やんわり誰かを教えてやるべきだったのだろうか。
春妃は当て付けのように俺の頬にキスをして逃げたし、あれを見ればきっと彼女も嫌な気分になっただろうから。



「その前にいい雰囲気になっていただけに、ショックだったよな」


俺の顔を見て、彼女は表情を曇らせていた。
立ち去る前もぐっと唇を噛み、何かを我慢するように歩き出した。


その背中を見ながら、どことなく声をかけづらかった。
手をに握ろうとしたが走って逃げられ、追いかけたくても追わないで欲しいオーラが漂っていた。



「…なんだ俺、案外と意気地がないな」


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