若きビル王とのエキサイティング・マリッジ

謙遜しながら笑っているけれど、私は祖父達から彼のことを耳にしている。

琉成さんは最近ますます腕を上げ、いい友禅師に育っている…と。


「君ならきっと大丈夫だよ。いい買い手がついて、高い値段で着物も売れてくれる筈だ。
そうなれば君も立派な友禅師の仲間入り。どんどん注文が増えて、もっと忙しくなるぞ」


祖父は上機嫌でそう言い、「そうそう、忙しくなると言えば…」と私を見て話そうとした。


「あ…お祖父さん」


ひょっとして、あの事を話そうとしている…と悟った私は、慌てて祖父を呼び止めた。


「琉成さんは長距離の移動できっとお疲れよ。話はまた後にして、先にお茶に誘ってあげてもいい？地下にある和菓子店さんで、新作のお菓子が発売されたらしいの。私、それに興味があるから一緒に食べてきてもいいでしょ」


唐突だったかな…と祖父の様子を窺えば、私を見返し、「まあ、それもそうだな」と納得してくる。


「じゃ私、琉成さんと一緒にお茶してきますね。お客様が来られる予約の時間には戻ってきますから」