若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
さあ行きましょ、と琉成さんの背中を押し、彼が上がってきたエスカレーターに向いて歩きだす。


「大丈夫なのかい?」

「平気よ。お店には、祖父と父がいれば間に合うから」


店内での接客や販売は、主に父と祖父がやっている。
私は着付けやアレンジが担当で、それ以外の仕事は特に決まってはいないのだ。


「だったら良かった」

「え?」

「僕は香織ちゃんに話があるんだ」


ニコッと微笑む琉成さんは私を見つめ、「後で聞いて」と言ってくる。


「ええ、いいけど…」


何だろう?…と頭を捻りながら二人で地下へ下りた。

地下一階のフロアには、食品売場やお菓子売り場などがあり、私が彼を誘ったお店はその中の一店舗で、売り場の中にイートインスペースが設けられてある。



「此処へはよく来るの?」


新作のお菓子と抹茶のセットを注文した琉成さんは、一口お茶を飲むとそう聞いた。


「たまにね。お店に居ても暇な時とか、『疲れたな』と祖父が言った時に、誘って来たりもするの」

「相変わらず、お祖父さんっ子なんだ」

「違うわよ。お祖父さんもお年だし、たまには労おうと思っているだけ」


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