若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
つい唇の先まで出掛かったのは、この間お見合いして、結婚を前提に付き合いを継続したい…と言ってきた相手のことだ。

さっきは祖父がそれを言おうとしたのを止めてしまったくせに、自分が今ここで、琉成さんに話すのはおかしい気がして口を噤んだ。



「是非、考えてみてくれないか」

「えっ、…あの、でも…」

「僕は昨日や今日の思いつきで、これを言いにきたんじゃない。だから、香織ちゃんにもじっくり考えて、答えを出して欲しい」


こっちは焦らないから…と琉成さんは大人な態度で言ってくれるのだが___。



(どうしよう……)


頭の中では、兄みたいに慕ってきた彼のことを、今更恋人のようには思えない…と感じていた。

プロポーズされたからと言って、これまでの関係性がガラリと変わってしまう訳でもなく、むしろ、これまでよりも慎重になって、彼を傷付けないようにするには、どうすればいいだろう…と迷ってしまっていた。



(私……この話を最初から断ろうとしている……)


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