若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
これはこれで、確かに『染屋白浜』らしい着物ではある。
これならきっとお得意様もついて、この先、琉成さんの着物を欲しがるお客様も大勢出てくるだろうと思われる。



(……でも、私が求めるものとは違う)


断言するように感じてしまい、ぎゅっと掌を握る。


私はやっぱり、琉成さんの元へなんか行けない。
こんなに違うものを描く人と一緒になんて、やっぱりなれない。


(わかっているけれど、それをどう彼に伝えれば……)


傷付けないように…というのが、到底無理なのかもしれない。
想いに応えないということはつまり、深からず相手を傷付けることになるのだから__。


(だったら、あの人は…)


あの人なら断っても傷付けないと思っているの?
そもそも私、あの人との縁談を本当に断りたいと考えているの?

心の中ではもう一度彼に会いたいと思っているんじゃない?
あの時の女性は誰か確かめて、彼とは無関係だと知りたいと思ってない?



あっ、まただ…と自分を見つめ直して気づく。

やっぱりまた、私は彼のことを思っている……。


< 93 / 137 >

この作品をシェア

pagetop