若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
「え…と、何か」


ノーネクタイの男性はキョトンとし、俺に向かって声をかけ直す。
後ろに控えている友人も(何だ?)といった表情で、こっちを見つめていた。


「あ…すみません。急に声をかけてしまって。先程からお二人が俺の知り合いのことを話し合っておられたので、つい気になってしまって」


嘘ではないぞ、と自分に言い聞かせながら話すと、相手は驚く様な顔をして見せる。


「……香織ちゃんの知り合いですか?」


窺うように訊いてくるが、そっちこそお前誰だよ…と言いたい。


「俺はその、香織さんとはお見合いで会いまして。現在、結婚を前提にお付き合いをさせて頂いているのですが」


まあ、それを言ったのは今朝のことなんだが…と胸の内で思うと、相手はギョッとしたように目を見開き、「結婚!?」と声を上げる。


「彼女から、そういう話を一切聞いておりませんが」


本当なんだろうな?…と訝しそうに俺を睨み、多少気も引けないこともなかったが……。


「事実です。嘘だと思うなら、彼女の祖父に伺っても構いません」


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