若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
見合いの発端は彼だからな、と胸を張って答えると、相手は一瞬口籠もり、ぐっと唇を噛み締めた。
「あの…失礼ですが、貴方は?」
後ろにいる友人は間を割るように質問し、本当なら身分を明かせ、と冷静な態度を示す。
「ああ、そうですね。俺はこういう者です」
胸のポケットから名刺入れを取り出し、中の一枚をカウンター上で滑らせるようにして差し出す。
相手はそれを指先で受け取り、自分に近付けて目線を走らせた。
「『NISSO設計』?」
「ひょっとして、このビルを建てた、あの…」
俺に目を向けてくる友人は、後ろから名刺を覗き込み、「専務!?」と驚いて声を上げた。
「ああ、それ一応の肩書きですから」
あまり気にならさず、と余裕を見せて返事をすれば、二人は呆然と俺を見つめ返してくる。
「……ところで、貴方は香織さんとはどういう?」
痺れを切らせて問いかけると、ハッと我に戻ったらしい彼は、バツが悪そうに眉根を寄せた。
「……僕は名刺など持ち合わせておりません。窪田琉成という友禅師です」
「友禅師?」
「あの…失礼ですが、貴方は?」
後ろにいる友人は間を割るように質問し、本当なら身分を明かせ、と冷静な態度を示す。
「ああ、そうですね。俺はこういう者です」
胸のポケットから名刺入れを取り出し、中の一枚をカウンター上で滑らせるようにして差し出す。
相手はそれを指先で受け取り、自分に近付けて目線を走らせた。
「『NISSO設計』?」
「ひょっとして、このビルを建てた、あの…」
俺に目を向けてくる友人は、後ろから名刺を覗き込み、「専務!?」と驚いて声を上げた。
「ああ、それ一応の肩書きですから」
あまり気にならさず、と余裕を見せて返事をすれば、二人は呆然と俺を見つめ返してくる。
「……ところで、貴方は香織さんとはどういう?」
痺れを切らせて問いかけると、ハッと我に戻ったらしい彼は、バツが悪そうに眉根を寄せた。
「……僕は名刺など持ち合わせておりません。窪田琉成という友禅師です」
「友禅師?」