花火
その時だった。
「悪い、遅れた!」

大きな声がすごく頼もしく感じた。

たたっと足音が聞こえ、ぼやけていた目の前が申し訳なさそうな彼の顔でいっぱいになる。

「ほんっとごめん」

そういって私の手をとる。

「…遅い」

泣いたあとで、ちょっと安心して。
こんな顔見られたくなくてそっぽを向く。

「ごめんって。ほら、まだ間に合うだろ?」
だからいこう?と言われてしゃがみこんでいた私は立ち上がる。

よく見える橋までの、短い距離。
繋がれていた龍斗の手が温かい。
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