【激短編】区切られた空
「ここから、大好きな人と落ちる時は気をつけなきゃね…」


「えっ?」


「だって、左右に分かれてバラバラに落ちたら、もう会えなくなるかも知れないから…」



君の寂しげな表情に僕は言葉を失った。


窓に君の白い指が触れ、遠くを見た視線が静かに移された君の視線が僕の視線とぶつかった。



「でも、手を繋いだまま落ちれば、きっとバラバラにならずにいられるよね。」



君は、僕を真っ直ぐに見たまま小さく言った。


少しうるんだ瞳が、まるで



一緒に行ってくれる?―



と問い掛けている様な気さえする。


君の妙に真面目な視線に耐えきれず、僕はついうつむいてしまった。



―ぷっ…



ははは。



緊縛した空気を一気に解きほぐす君の明るい笑い声が、かなり唐突に部屋の中に響いた。



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