あの丘で、シリウスに願いを
第九章 カレシはいますか
クリスマスの後は年末年始と、怒涛の忙しさだった。まことと翔太は仕事に忙殺される毎日だった。
まことが暮らす寮は病院から歩いて10分ほどの距離だというのに、ひどく遠く感じる。帰ることさえ億劫だ。翔太が部長室に住み着きたくなる気持ちがよくわかる。
まことはため息をつきながら自分の部屋に帰った。
ポストを開けると一通の手紙が入っていた。
差出人は、『北山蓮』。内容はベリーヒルズ内の総合病院への勧誘だ。
クリスマスイブにレストランで言っていたのはちょっとしたリップサービスかと思っていたが、まことのことを本格的に誘う内容だ。
患者一人一人に寄り添って治療を行う為に、まことが必要だと、熱烈なラブコール。
激務に疲れ果てていたまことには、魅惑的な誘いだ。しかも場所はあのベリーヒルズ。
青空の下、太陽の光が反射してきらめくベリヒルは、まことに憧れをくれた。
そして、翔太と二人で見た夜景。最高にロマンチックで、心震えるほどに感動した。
そんな思い出の場所で働けることに心ぐらつきそうになる。
でも。
まことは、その手紙をゴミ箱に放って、大きなあくびをしながらベッドにダイブした。