あの丘で、シリウスに願いを
「これが私のストレス発散のご褒美なんです」
「最高だね。俺、まだ夢見心地だよ。絶対また、まことと一緒に来たい。ほら、俺たち夫婦だし」

みんなの勘違いを思い出し、まことは頬を赤く染めた。

「そこは否定してほしかった…翔太先生が曖昧な返事したから誤解したままになっちゃって」
「アハハ、ま、酔っ払いのご愛嬌。もぅ、いっそのこと本物の夫婦になっちゃうか?一条まこと。響きも悪くない」

試合によほど興奮したのだろう。翔太もかなりのハイテンションでまことに抱きつく。

「翔太先生、テンション上がりすぎ。帰りましょう、大丈夫ですか?」
「もう少し、この楽しい気分のままでいたいなぁ。…まことと一緒に余韻に浸っていたいよ」
「このところ、ずっと忙しかったですからね。
今夜くらい仕事を忘れてもいいかな」

ベリーヒルズの夜は、世界的デザイナーの服を着て、高級懐石料理を食べて、夜景を楽しむラグジュアリーな夜だった。
一方今夜は、野球チームの応援ユニフォームを着て、唐揚げに枝豆にビール。野球の試合を楽しむ庶民派の夜。

互いが用意できる内容の違いが立場の違い。

翔太は住む世界が違う。それでも、彼がまことが一番楽しみにしている大事な時間を一緒に楽しんでくれたのが本当に嬉しかったから。


「今夜は翔太先生を独り占めさせて下さい」
「…っ!…全く、まことは…」

ーー可愛すぎるよ。

翔太は、思わずそう呟いた。









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