あの丘で、シリウスに願いを


「…やっぱり、敵わないなぁ」

翔太は一つ大きく息を吐いた。思いもかけないまことの提案に、翔太の心が震えていた。
まさかのラストチャンスがまことから放られてきたのだ。絶対に逃してはいけないチャンスが。

「一条翔太の時間を下さいなんて。六平まことの時間をあげますなんて。俺には思いつかなかった。シビれるなぁ。
でもさ六平まことの時間は、医師として頑張ってほしいんだよ。人生かけてる仕事だろ?
…ここからは俺も提案なんだけど。
ねぇ、まこと。『一条まこと』にならない?仕事を離れたわずかな時間だけは、全て俺だけのまことになってくれたらって思うんだけど…」

まことは、翔太の打ち返してきた提案に、大きく目を見開いた。驚きすぎて心臓が跳ねる。慌てて胸に置いた手に力を込める。

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