あの丘で、シリウスに願いを


「まこと先生」
「あ、教授。お疲れ様です。今日はこちらだったんですね」
「あぁ、講義があってね」

その時まことに声をかけたのは、光英大学附属横浜新医療センター長、一条利周教授だ。大学の講義を持っているのでしばしば大学病院にも顔を出している。

「アイツ、そろそろ帰ってくるか?」
「そうですね、予定では今日です。
横浜はどうですか、やはり忙しいですか?」

まことの問いかけに教授は特大のため息をついた。

「まこと先生をエースに出来ていればなぁ。小西先生も頑張ってくれてはいるが、正直物足りん。
まぁ、でもまこと先生が翔太の嫁に来てくれたのは、想定外の喜びだ。人生万事塞翁が馬。バカ息子にしては良くやったと褒めてやろう。
まこと先生の分までしっかり働くと息巻いていたし…まぁ、帰ったら労ってやって下さい」

教授が去っていく。
教授とまことが話をしているのを見て、研修医が柊子をつついた。

「み、水上さぁん、あれ、一条教授…ですよね?
六平先生、すごいな、教授とあんなに親しげに話してるっ」

研修医は、尊敬の眼差しでまことを見つめている。
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