あの丘で、シリウスに願いを


着替えに向かった女子更衣室には、香水の匂いが充満していた。若い子達は、鏡の前で自分磨きに余念がない。


「ねー、その弁護士、ベリヒルに住んでるって本当?」
「どうかなぁ。翔太先生に聞いたら知らないって言うから、ウソかも」


そんな会話が聞こえて、ギョッとする。話していた女の子の一人を捕まえて、まことは思わず尋ねた。

「ベリヒルってベリーヒルズ?翔太先生、ベリーヒルズに詳しいの?」
「いやだ、まこと先生、知らないんですか?
翔太先生、ベリヒルに住んでたんですよ、ここに来るまで」


ベリーヒルズビレッジの高級レジデンスには、名家の御曹司やご令嬢はもちろん、若くして成功し、時代の寵児になれた富豪が居住していると言われている。
さすがは、『世界の一条』の一族。あの若さでベリヒルの住人だったとは。
まことは、ポカンとしてしまう。

「本当は、合コンなんかより、翔太先生狙いたいんですけどー。翔太先生、誘っても忙しくてなかなかご飯にも行けなくて」
「せっかく遊んでても、途中で呼び出されたり。
カノジョは、キツイかも」
「でもさぁ、スペック最高なんだよねー」
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