あの丘で、シリウスに願いを
「あー美味しかった。ご馳走さま。これで夜勤も頑張れそう。ありがとね、まこと先生」
「信じられない。翔太先生、こんど、絶対おごって下さいよ。今夜の勤務中に少しずつ食べようと思って多めに持ってきたのに」
「分かる。夜って結構腹へるよなぁ。とりあえずあとで、非常食のカップ麺あげる」

そう言って、ポンポンとお腹を叩いて翔太は自分のデスクに戻って行った。

ベリヒルに住んでいたくらいお金持ちなのに、こんな地味な煮物を美味しいと言って食べるなんて。

空になった容器と翔太を交互に見て、まことは小さく笑った。


三ヶ月勤務して、わかったことがある。
一条翔太は、たぶん部長室に住んでいる。
彼が丸一日休んだ日はない。毎日、居る。もちろんずっと居るわけじゃない。フラフラとどこかへ行ってしまったりするが、見かけない日はない。
本人はモテ男を自称しているが、デートになんて行く時間も惜しんで仕事をしている気がする。

どうしてそこまで出来るのだろう。
男性としての興味はまるでないが、医師としての興味はある。


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