あの丘で、シリウスに願いを
『はーい、まこと先生?どうしたの?』

だが、電話に出た声は水上ではなかった。

「その声は、翔太先生?」
『うん。今、洸平は緊急オペ中でね。携帯預かってる。まこと先生から洸平に電話なんて、何、何?実は好きですみたいな、告白?』

こんな時に茶化してくる翔太に苛立ちを覚える。

「バカなこと言わないで下さい。詳細は省きますが、私、今、水上先生の奥様と一緒にいます。
奥様が破水しまして」
『柊子ちゃんが?え、まこと先生、一緒にいるの?知り合いだったの?てか、大丈夫なの?』

電話の声が一気にこわばる。

「大丈夫です。私、地元で何度もお産に立ち会っています。本格的なお産はまだこれからですよ。
翔太先生、産婦人科に連絡してもらっていいですか?」
『それは、任せて。
なんか分かんないけど、まこと先生が側にいてくれて良かったー。
あのさ、柊子ちゃんはつい三ヶ月前に交通事故にあってる。柊子ちゃん自身の怪我は軽症だったけど、胎児にはもしかしたら影響あるかもしれない。何があるかわからない。注意してよく見ていて欲しい』
「わかりました。でしたら、なるべく早く病院に行った方がいいですね。タクシー呼びます」
『タクシー待ってる時間もったいないよ。車も俺が手配するから。まこと先生はそこにいて、柊子ちゃんを頼むね』


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