あの丘で、シリウスに願いを
柊子を見送ってからまことは、救急外来に顔を出した。
とっさのこととはいえ、仮にも部長の翔太に生意気な事を言ってしまった。明日から気まずいくらいなら、今のうちに謝っておこうと思ったのだ。

「あれ、まこと先生、どうしたんですか?」
私服のまことに気づいた看護師が声をかけてきた。

「翔太先生、いる?」
「何かあれば呼んでって、部長室に入って行かれましたよ」
「そう。わかりました、ありがとう」

まことは、迷う事なく部長室に向かい、ドアをノックした。

「六平です」
「え?あ、どーぞ」

部長室で翔太は先程のパニックなど嘘のように、机に向かっていた。

「産まれた?さすがにまだだよねー?
どうしたの、まこと先生」

「あ、いや。先ほど大変失礼な事を言ってしまったので、謝罪に」
「あー、気にしなくていいよ。まこと先生の言う通りだもん。俺の悪いトコなんだよ。すぐに感情的になってしまう。落ち着いて冷静にもっと物事を俯瞰的に見ろってガキの頃から耳にタコができそうなくらい言われてる。
まこと先生の一言には、痺れたよ。最近はあそこまではっきり言われることなかったから。でもお陰で我に返った。ありがとね」

いつもと同じ、翔太は軽く笑っていた。
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