あの丘で、シリウスに願いを
第七章 その胸の勲章


翔太とまことは、ジュンの事務所を出てそのまま高層階のレストランにやってきた。

照明を落とした店内は、カップルでいっぱいだ。案内されたのは窓際の二人がけのテーブル。窓からは、まことが見たかった夜景が広がっていた。

「…キレイ…」
「展望台みたいに360度ぐるりとは見れないけど、食事をしながらゆっくり夜景を見るのもいいでしょ?」
「そうですね。わざわざ着替えてまで来た甲斐がありました」

普通の女の子なら、ジュンのデザインした服を着れるだけで喜ぶものだが、服には興味がないのかあまり嬉しそうには見えなかった。
だが、ようやく喜んだ笑顔が見れて翔太はホッとする。

「食事は、季節の懐石料理をクリスマス用にアレンジしたものだって。まこと先生、ワインでも飲む?」
「いえ。ワインは苦手なので」

会話はそれで終わってしまう。
まことは、ただひたすらジッと窓の外を見つめている。よほど見たかったのだろうと翔太は思った。


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