あの丘で、シリウスに願いを

「アイツ、今はこのベリーヒルズビレッジ内の総合病院で働いてるんだ。洸平のこともスカウトしてたんだよ。あそこは優秀な外科医が揃ってるのになぁ、まだ欲しがるか」

まことは、傷跡を手で隠したまま椅子に座りなおした。この傷跡は、自分で思っているよりずっと目立ってしまう。ここ最近はあまり肌を見せる服を着ていなかったから、そのことを久しぶりに思い知らされた。

「隠す必要はないよ。まこと先生が戦いに勝った勲章じゃないか」
「…え?」
「堂々としてればいい。アイツは女ったらしだから、真っ先にまこと先生の胸を見たんだよ。全くしょうもないヤツだ」
「こんな背中か胸かわからない程度にしかないのに…男ってバカ」
「そ、バカなの。だから気にしなーい」

まことは、笑いながら胸元を隠していた手を離す。いつものように、軽く笑い飛ばしてくれたことが嬉しかった。

「これは私にとって隠すべき恥ずかしいものではない。私が生きる為に戦った証だから。それでも、やっぱり人目が気になってしまうこともありますね」
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