あの丘で、シリウスに願いを



壁紙は薄汚れ、椅子は縫い目が破けて中身が見えている。パソコンは限られた台数しかなく、しかも古い型。やってくる患者は高齢者が多い。
地元で唯一の総合病院は、地域に根ざし地元住民に頼りにされる病院で、毎日忙しい。



それが、現在まことのいる現実だ。生まれ育った地元だが、あと数日でここを去る。



「六平先生、これ。カルテの整理をよろしく」
「わかりました」

まことより若い男性医師が、まことの目の前に積み上げられたカルテにさらに追加分を置く。
まことは思わずため息をついた。
ここでは、雑務を一手に任される。ここの外科に女医はまこと一人。先輩の真似をして、後輩の若い男性医師らもまことに雑務を頼んでくる。男性優位は否めない状況といえた。


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