あの丘で、シリウスに願いを
不意に目が覚めた。あたりは暗闇だ。
どこで寝ているのかわからない。ふかふかのベッドは、少なくとも病院の仮眠室ではない。
自宅のベッドにしては広いし、それにとても暖かい。
まことは、寝ぼけたまま寝返りをうって気づく。
誰か、いる。
まことの隣で、眠っている。
眠っていても整ったよく知っている顔に、眠気は一気に吹き飛んだ。
そうだ。ここは、ベリヒルの翔太の部屋だ。着替えの為にちょっとお邪魔して、うっかりそのまま眠り込んでしまった。
ーーどうしよう。どうして一緒にベッドに?
何もなかった、よね…
「…っ!」
その時心臓が大きく跳ねた。久しぶりにひどく動揺したせいだ。まことは心臓を抑えて小さくうめいた。
「どうした!?まこと、痛いの?」
まことの異変に翔太が飛び起きた。
心臓がひどく打ち付け、息も苦しい。汗がどっと吹き出す。
「…っ」
「大丈夫。落ち着いて、まこと。ゆっくり息をして。いきなりどうしたの?」
「…目が、覚めたら、翔太先生がいて…」
「そっか、ごめん。びっくりさせちゃったんだね。何もしてない、ただ仮眠しただけ。
落ち着いて。ゆっくり息をしよう」
翔太はまことの手首で脈をはかりながら、彼女の胸に手を当てる。脈も心音も問題はない。