マリッジ大作戦
別れ話をしたあの日、祖父がなくなり初七日の法要で遺言状の内容が発表された。

孫三人へ託された雅流。

ずっと息苦しさを感じていたまゆりは、自分への遺言状をあけることなく、継承権を放棄し逃げ出した。

瑛士ならわかってくれる。
瑛士は、私の味方だ。

しかし、熱く抱き合ったあとに言われたのは、自分が望んでいたものとは違っていた。

ちょっと遅い反抗期だったのではないかと、今なら思えるが、財閥から遠ざかって五年。
今は、雅榮家の人間と知りながらも態度を変えない古くからの友人や職場の人間と他愛ない会話ができるのに息苦しさはなくなっていた。

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ベリーズヒルズビレッジの中にあるテナントビルに向かい、ロッカー室で速乾性の生地でできたメッシュの白いボロシャツとチノパン、黒いガーデニングエプロンに着替えて、少しウェーブかかったロングヘアをポニーテールすると、ロッカー室をあとにした。

「お疲れ様です。」

テナントビルの屋上にある、庭園の温度管理室に顔を出すとぐったりとしたメンバーがいた。

「まゆりさん~。お疲れ様です……。」
「まゆりさん。もう眠くて限界です……。」

若い男女が管理室の中央にある大きなテーブルに伏せながら項垂れていた。

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