マリッジ大作戦
瑛士は、まゆりを抱きしめる手をゆるめることはせずに、まゆりの感触を確かめている様子だった。

「今から、引き継ぎとかやらないといけないことあるから家に送り届けられないけど、大丈夫か？？」

「あっうん。今からご飯食べに行くから。一人じゃないし大丈夫。」

抱きしめられた手がゆるみ、優しい眼差しで覗きこまれたが、まゆりの答えを聞くなり、オーラが変わった。

「ご飯？」

「う、うん。彩月とスペインバルに行くんだけど……。」

昔からの親友の名前を出すと、安心したように纏っていたオーラが和らいだのがわかる。

「遅くならないように行った方がいいな。」

庭園からテナントの外にある自転車置場まで、
なぜかニコニコした瑛士に手をひかれ、"またな"と見送られ、まゆりは困惑し"また"と返してしまった。

それから彩月が待っているスペインバルまでの道をどう自転車を走らせたか覚えておらず、ボーとしていたためよく事故に遭わなかったなぁと思ってしまった。

本当に今日一日、ずっと瑛士のことを考えている自分がいて５年の年月を感じさせない距離感を心地よいとさえ思ってしまう。

そして、久しぶりのキスに顔が再び火照るのがわかる。
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