地獄船
もう、後戻りはできない。


続いて俺は右端の線を選び、浩成が左端になった。


「できたか~? 紙、持って来い」


鬼にそう言われ、子鬼が俺たちから紙を取って走って行く。


子鬼の後ろ姿を見送っていた綾が大きく息を吐き出した。


「大丈夫か?」


「うん。さすがに、ちょっと緊張しちゃった」


綾はそう言い、ニコッとほほ笑む。


俺を安心させるための笑顔だったようで、その顔はひきつっていた。


「大丈夫だよ。きっと、俺たちは助かるから」


そう、2人で助かろう。


こんな鬼たちから逃げ出して、日本へ帰ろう。
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