地獄船
「ダッセー」


ギャル鬼が便乗する。


視界の端で文夫が小刻みに震えているのが見えた。


「生きてる価値なーし!」


鬼の声が文夫が小さく悲鳴を上げた。


逃げようとして腰を浮かすが、体に力が入らないようですぐに座り込んでしまった。


「こ、殺すのか?」


声を喉に張り付かせながら、俺はそう聞いた。


鬼が「当然じゃぁん」と、ギャルの真似をして答えた。


「どうして? どうして殺すんだよ」


「なになに? 今更どうしちゃったの?」


ギャル鬼が興味津々に俺を見てそう言った。


「だって、おかしいだろ! いきなり来て、いきなり友達を殺し始めて、絶対におかしいだろ!!」


最初の頃の恐怖でそんな質問さえできていなかった。


「なぁに言ってんだよ。これだけ俺の子供がいることが見えてねぇの?」


広間をぐるりと取り囲むように立っている子鬼たち。


ザッと見ただけでも100人はいるかもしれない。
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