地獄船
顔色の悪い綾がステージの上に立つ。


子鬼たちに視線を向けられた綾は余計に緊張したようで、額にうっすらと汗が滲んでいた。


綾が選んだ曲は……動揺だった。


誰もが1度は聞いたことのある、クマさんが出て来る動揺だ。


その選曲に俺はほほ笑んできた。


小さな頃から聞いている曲なら、綾でも歌えることだろう。


しかし……。


歌が始まった瞬間、それは地鳴りとなって広間を覆い尽くしていた。


俺の聞きなれたクマさんの曲がガラガラと音を立てて崩壊していく。


想像していたクマさんとお嬢さんの姿がグニャリと曲がり、それは怪獣と妖怪に変化する。


思わず耳を塞いでしまいたくなる歌声に、浩成が嘔吐した。


メマイと吐き気が交互に訪れこれは歌声と言う名のテロだと気が付く。


綾、お前は俺たちを殺すつもりか。


そんな時間が終り、ようやく俺たちは綾のテロから解放された。


どうやら、みんなの命は無事のようだ。


しかし、ミヅキと小恋は放心状態で座り込んでしまっている。
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