地獄船
そう言ったのは小恋だった。


「感覚が違う?」


ミヅキが聞き返す。


「うん。鬼の世界では、歌が下手な方がいいんじゃないかな?」


ここがそう言うとほぼ同時に「ブラボー!」「マジ神!」と、あちこちから綾を絶賛する声が聞こえて来た。


マジかよ……。


「なにそれ、冗談でしょ?」


ミヅキの顔が一瞬にして青ざめた。


超絶歌の上手いミズキからしてみれば、死が一気に近づいたことになるのだ。


青ざめても当然だった。


「大丈夫だよミヅキ。紅組には綾がいるんだから」


小恋がそう言い、ミヅキを慰めたのだった。
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