地獄船
☆☆☆

それから鬼たちの議論が広がった。


全体的な評価で言えば白組がよかった。


だけど紅組の綾はダントツでよかった。


紅組も白組もどちらも捨てがたいということだった。


やっぱり、俺たちとは感覚が180度違うようだ。


それを知っていれば、俺だってもう少しマシに歌っていたのに。


俺と綾は並んで座り、結果が出るのを待っていた。


「ごめんね、下手な歌を聞かせちゃって」


綾が申し訳なさそうにそう言うので、俺はほほ笑んだ。


「そんな事ないって、綾の歌俺は好きだぞ」


よくもまぁこんな嘘が簡単に言えたものだと、自分でも呆れてしまう。


綾の歌声は間違いなくテロだった。


「そう言ってもらえると嬉しい」


綾は頬を赤く染めて恥ずかしそうにそう言った。


その仕草が可愛くて、なんでも許してしまいそうになる。


綾の歌声で吐いてしまった浩成は、さっきから綾に近づかないようにしている。


すでにトラウマになっている様子だ。
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