地獄船
☆☆☆

数時間ぶりに船の上に出ると風が吹いていた。


血なまぐさい広間にいたため、潮の香が心地いい。


俺の後方では海へ向けて嘔吐する音が聞こえて来る。


少しは楽になるだろう。


「逃げるって、どうやって」


綾に聞かれて俺は一瞬言葉に詰まった。


具体的な方法は考えていなかった。


どうにかすれば外部との連絡が取れるはずだけど、その方法を探している間に鬼たちが目覚めるかもしれない。


「他のみんなを探そう」


一番早い方法はそれだった。


この船には何千人という人間がいたのだ。


どこかに誰かがいるはずだった。


もしスタッフの誰かを見つけることができれば、その人を頼ればいい。


「すげぇ、船だよな」


後ろから歩いて来た浩成が、金色に輝く船を見てそう言った。
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