地獄船
「だってさ、こっちの船には誰もいないんだよ? 鬼の船に移動していると思わない?」


ミヅキの言葉に俺は唸り声をあげた。


もちろんその可能性もあるかもしれないが、可能性としてはすでに全員食べられていると言う方が高い気がする。


「行ってみようぜ。ここに梯子がある」


浩成がそう言い、船の先端からぶら下がっているロープの梯子を指さした。


高さは随分とあるけれど、登れないほどではない。


考える暇もなく、浩成はそれを使って登りはじめてしまった。


ミヅキがその後に続く。


俺は綾を見た。


「あたしは大丈夫だよ」


綾が頷き、梯子に手をかけた。


「じゃあ、行こう」


俺は綾の後に続き、梯子を上りはじめたのだった。
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