地獄船
俺は首をかしげつつ、もう一度扉に触れた。


冷たい扉にグッと力を込める。


するとギギギッと低い音を上げながら扉が開いたのだ。


空いた隙間から冷気が廊下へと這い出て来て身震いをする。


中は電気がついていなくて薄暗かった。


扉と同じで部屋の中も銀色になっている。


その部屋を埋め尽くすように、人がいた。


人はズラリと整列し、両腕をロープで縛られ、天井から吊るされているのだ。


扉を開けて空気が動いたことで、微かに揺れている人もいる。


誰もが目を閉じ、冷気で髪の毛や服が白くなり始めている。
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