地獄船
腕が微かに震えはじめ、体が崩れ落ちそうになる。


どうにかそれを耐え、また1回、腕立て伏せをする。


「なんだよお前ら、その程度かよ~」


鬼が呆れた声を出した。


けれど、鬼の様子を確認している暇はない。


「仕方ねぇなぁ。お前ら特別に100回で許してやるよ。いつまで待ってもできそうにねぇもんなぁ」


100回。


それでも気の遠くなるような回数だ。


俺と綾はリズムを合わせ、25回目の腹筋を終えた。


聞こえて来る浩成の声は50回を超えている。


あと半分か。


そう思った時だった。


ドタッという音がして俺は動きを止めた。


見ると、一番端にいるミヅキの姿が見えない。


「なんだよ、もうダウンかよ~」


鬼のつまらなさそうな声が聞こえて来る。
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